乳がん発見のために幅広く利用されているマンモグラフィーが、女性の心臓病リスクを検出するツールとして使える可能性があるとする研究が発表されました。
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マウント・サイナイ医療センター(ニューヨーク)乳房画像診断担当責任者のローリー・マーゴリーズ博士らの研究チームによると、女性292人を対象としてマンモグラム(乳房X線画像)上の乳房動脈内で検知されたカルシウムの量と冠動脈内のカルシウムの量を調べたところ、強い相関があることが分かりました。冠動脈内のカルシウム量は、心臓病や脳卒中のリスクの主な予測因子。論文の主執筆者であるマーゴリーズ博士は、今回の研究で「人々が利用しやすい手法」が見つかったと述べ、しかも「余計な費用や余計な放射線(被ばく)なしに心血管疾患のリスクを判断できる」と強調しました。

この研究によると、冠動脈のカルシウム量を予測する手法として、乳房動脈内のカルシウム量を計測することが、伝統的な手法(血圧、コレステロール値や広く用いられているフラミンガム・リスクスコアなど)と少なくとも同程度に有効。マーゴリーズ博士は「これが検査の変革につながるよう期待している」と話します。同博士は、マンモグラフィーを通じて心臓病リスクが分かることの恩恵は大きいと述べました。ただ、その情報によって心臓発作や脳卒中を減らす予防措置を取れるようになるまでには、さらに規模の大きな研究が必要だと指摘。

米国心臓病学会(ACC)は、学会誌にこの研究結果を公表した。4月1日のシカゴでの年次会合ではマーゴリーズ博士が研究発表を行う予定。この研究は、たばこ業界との訴訟の和解金で運営されている非営利団体「客室乗務員医学研究所」などから助成金を受けました。米国では毎年3700万件のマンモグラフィー検査が行われているが、その際、「石灰化」と呼ばれるカルシウムの小さな点が検出されることがしばしばあります。石灰化は総じて良性だが、ときに乳がんの場合もあります。

マンモグラフィーは、乳房動脈内のカルシウムも捕らえます。心臓専門医らは長年、乳房動脈内のカルシウム量が女性の心臓病リスクを評価するのに使える可能性があると考えてきました。

今回の研究論文とともに掲載された解説の共著者で、バプテスト・ヘルス・サウス・フロリダ病院医療発展センターの所長を務めるクラム・ナジル博士は、「この情報はずっと前からあったのだが見過ごされていた」と話します。同博士はこの研究に参加していない。

研究のため、マーゴリーズ博士のチームは、冠動脈疾患を患っていない292人の女性を対象とした。マウント・サイナイ医療センターでマンモグラフィーと胸部CTスキャンの両方を同じ年に受け、冠動脈疾患を患っていないと診断された女性たち。CTスキャンは心臓病とは関係ない理由で実施されていました。チームは、マンモグラフィーおよびCTスキャンに映し出された動脈内のカルシウム量を0から12までの点数で評価。

その結果、乳房動脈のカルシウム量が高い女性(4-12点)は、マンモグラフィーで0点だった女性と比較すると、冠動脈に石灰化がみられる確率が3倍以上高かったのです。このような情報が定期的に行われるマンモグラフィー検査の報告に入っていれば、女性たちが心臓病リスクを評価する詳細な検査(血液検査や心臓の画像診断など)を受けることにつながる可能性があります。

これは予防的措置、例えば食生活の変更、運動、さらにはスタチンのようなコレステロール降下剤の服用といったリスク低減措置を取るきっかけになるかもしれない、とマーゴリーズ博士は指摘します。